人の主観の頼りなさ 「羅生門」
2008年11月22日
ある事件における目撃証言や裁判における証言などの信頼性は、
自分でもそうだが、あれってどれほど信頼できるのだろうと思った。
人の主観とはかなりの部分が思い込みや先入観などがあり、
実際に目で見て耳で聞いたことでも、思い込みが別のイメージで記憶に残ると言うことは普通にあるのだ。最近電車の中での痴漢事件で、冤罪の可能性がありやり直し裁判の命令が降りた事件があった。
中には痴漢の罪をわざとかぶせ示談金をせしめるような悪質なヤラセ痴漢もあるが、実際は被害者の思い込みや勘違いによる冤罪事件も少なくないのではないだろうか。
今日の映画紹介は「羅生門」である。
1950年日本 監督・黒澤明、
原作・芥川竜之介、脚本・橋本忍
出演・三船敏郎、京マチ子、千秋実、
上田吉ニ郎、森雅之ほか
物語は・・・
平安時代、森の中で侍(森雅之)が刺殺体として発見され検非違使の庁にて取り調べが行われるが、加害者と思われる盗賊(三船敏郎)、被害者の妻(京マチ子)、巫女の口を借りて語られる被害者の証言が尽く食い違い、雨宿りをしている発見者のそま売り(志村喬)や目撃者の旅法師(千秋実)の頭を悩ませる。
そこへ下人(上田吉二郎)が加わり、そま売りが新たな話をするものだから、益々真相が解らなくなる。
盗賊は自分が殺したと言い、妻は意識朦朧として前後は解らないと言い、被害者は自決したと言うのだが、彼らの心理の奥に人間のエゴが垣間見え、人間は弱く醜悪な生き物であるいう主題が浮かび上がってくる。
証言者それぞれがみんな自分の都合の良い、主観でものを言う。一体誰が真実を語っているのか結局わからない。
所詮人間の知覚や経験などと言うものもその程度のものなのだということだろう。
事件などで刑事が聞き込みをやって証言集めをする。裁判でも証人尋問がある。この映画を見ていると裁判での証人尋問でも、本人は真実を語っているつもりでも、それはあくまでその人自信の主観と個人的経験の属性の産物に過ぎないのだ。
この映画は芥川竜之介の小説「藪の中」を映画用に橋本忍が脚本を書き、巨匠・黒澤明がメガホンを取った作品である。
この作品は日本映画で初めて、イタリアのヴェネツィア国際映画祭金獅子賞および、アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、一躍世界に黒澤明監督の名前をとどろかせた大傑作である。
黒澤監督は三船敏郎を好んで作品に使っている。代表作といえば「七人の侍」、「用心棒」、「隠し砦の三悪人」などだが、当時の日本人俳優で三船は最もハンサムな男優とハリウッドの映画関係者が絶賛したという。この映画は三船30歳のころの作品であるが、日本人離れした彫りの深さや野性味が結構が西洋人の人気を得たらしい。後にフランスのアラン・ドロンやアメリカのチャールズ・ブロンソンらとともに「レッド・サン」という侍ウエスタンを制作しヒットさせた。
ちなみにこの三人の国際スターは友人同士である。

ヴェネチアでもハリウッドでも受賞した名作となると、ハリウッドでリメイクがなされた。
1964年に先日亡くなったポールニューマンやローレンス・ハーベイ、エドワード・G・ロビンソン、ウィリアム・シャトナーなどの名優で制作された「暴行」がある。
物語は、19世紀末。ある鉄道駅で3人の男が偶然顔を合わせた。
町の牧師とペテン師は汽車を待つためで、もう1人の探鉱者は雨宿りに駆けこんだのだ。
牧師は昨日町にあった奇怪な裁判に、人間というものに絶望していた。その裁判で悪名高いメキシコ人の強盗カラスコは旅行中の紳士を刺し殺し、紳士の美しい妻を犯した罪で縛り首を言い渡された。
奇怪なのは事件についての証言-カラスコ、犯された妻、瀕死の紳士から聞いたという老インデアンの話がそれぞれ違っていたことだ。舞台が「羅生門」の応仁の乱のころの日本からアメリカ開拓時代の西部劇になっている。やはりここでも人の話の曖昧さや思い込みをテーマにドラマを展開させている。
もう一本「羅生門」を意識した作品を上げておこう。
2008年アメリカ「バンテージポイント」今年の注目作品の一つである。物語は、大統領暗殺の真相を、8人の目撃者、8つの異なる視点で追ったサスペンス・アクション。
主演のシークレットサービスをデニス・クエイド、デニスの同僚役にはテレビドラマ「LOST」主演のマシュー・フォックスが演じる。ほかにも『ラストキング・オブ・スコットランド』でアカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィッテカーや『エイリアン』のシガーニー・ウィーヴァーら一流のスターが名を連ねるのでけっこう面白い。
斬新なストーリー展開と8つの視点から導き出される驚がくの結末に息をのむ。(シネマトゥデイより)
本来小説「藪の中」を映画化した「羅生門」は淡々と人間の性格やエゴイズムを証言から描き出す、文学的な人間描写が主体なのだが、「バンテージポイント」はむしろエンターテイメントに徹したサスペンスとスリルを楽しめる作品に仕上がっている。
まあ、それぞれに面白さがあり、いかに人間の認識力は頼りないものかがわかる。だから裁判でも捜査でも証言は複数のものを付き合わせるのがよくわかる。
自分でもそうだが、あれってどれほど信頼できるのだろうと思った。
人の主観とはかなりの部分が思い込みや先入観などがあり、
実際に目で見て耳で聞いたことでも、思い込みが別のイメージで記憶に残ると言うことは普通にあるのだ。最近電車の中での痴漢事件で、冤罪の可能性がありやり直し裁判の命令が降りた事件があった。中には痴漢の罪をわざとかぶせ示談金をせしめるような悪質なヤラセ痴漢もあるが、実際は被害者の思い込みや勘違いによる冤罪事件も少なくないのではないだろうか。
今日の映画紹介は「羅生門」である。
1950年日本 監督・黒澤明、
原作・芥川竜之介、脚本・橋本忍
出演・三船敏郎、京マチ子、千秋実、
上田吉ニ郎、森雅之ほか
物語は・・・
平安時代、森の中で侍(森雅之)が刺殺体として発見され検非違使の庁にて取り調べが行われるが、加害者と思われる盗賊(三船敏郎)、被害者の妻(京マチ子)、巫女の口を借りて語られる被害者の証言が尽く食い違い、雨宿りをしている発見者のそま売り(志村喬)や目撃者の旅法師(千秋実)の頭を悩ませる。
そこへ下人(上田吉二郎)が加わり、そま売りが新たな話をするものだから、益々真相が解らなくなる。
盗賊は自分が殺したと言い、妻は意識朦朧として前後は解らないと言い、被害者は自決したと言うのだが、彼らの心理の奥に人間のエゴが垣間見え、人間は弱く醜悪な生き物であるいう主題が浮かび上がってくる。証言者それぞれがみんな自分の都合の良い、主観でものを言う。一体誰が真実を語っているのか結局わからない。
所詮人間の知覚や経験などと言うものもその程度のものなのだということだろう。
事件などで刑事が聞き込みをやって証言集めをする。裁判でも証人尋問がある。この映画を見ていると裁判での証人尋問でも、本人は真実を語っているつもりでも、それはあくまでその人自信の主観と個人的経験の属性の産物に過ぎないのだ。
この映画は芥川竜之介の小説「藪の中」を映画用に橋本忍が脚本を書き、巨匠・黒澤明がメガホンを取った作品である。この作品は日本映画で初めて、イタリアのヴェネツィア国際映画祭金獅子賞および、アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、一躍世界に黒澤明監督の名前をとどろかせた大傑作である。
黒澤監督は三船敏郎を好んで作品に使っている。代表作といえば「七人の侍」、「用心棒」、「隠し砦の三悪人」などだが、当時の日本人俳優で三船は最もハンサムな男優とハリウッドの映画関係者が絶賛したという。この映画は三船30歳のころの作品であるが、日本人離れした彫りの深さや野性味が結構が西洋人の人気を得たらしい。後にフランスのアラン・ドロンやアメリカのチャールズ・ブロンソンらとともに「レッド・サン」という侍ウエスタンを制作しヒットさせた。
ちなみにこの三人の国際スターは友人同士である。

ヴェネチアでもハリウッドでも受賞した名作となると、ハリウッドでリメイクがなされた。
1964年に先日亡くなったポールニューマンやローレンス・ハーベイ、エドワード・G・ロビンソン、ウィリアム・シャトナーなどの名優で制作された「暴行」がある。
物語は、19世紀末。ある鉄道駅で3人の男が偶然顔を合わせた。町の牧師とペテン師は汽車を待つためで、もう1人の探鉱者は雨宿りに駆けこんだのだ。
牧師は昨日町にあった奇怪な裁判に、人間というものに絶望していた。その裁判で悪名高いメキシコ人の強盗カラスコは旅行中の紳士を刺し殺し、紳士の美しい妻を犯した罪で縛り首を言い渡された。
奇怪なのは事件についての証言-カラスコ、犯された妻、瀕死の紳士から聞いたという老インデアンの話がそれぞれ違っていたことだ。舞台が「羅生門」の応仁の乱のころの日本からアメリカ開拓時代の西部劇になっている。やはりここでも人の話の曖昧さや思い込みをテーマにドラマを展開させている。
もう一本「羅生門」を意識した作品を上げておこう。2008年アメリカ「バンテージポイント」今年の注目作品の一つである。物語は、大統領暗殺の真相を、8人の目撃者、8つの異なる視点で追ったサスペンス・アクション。
主演のシークレットサービスをデニス・クエイド、デニスの同僚役にはテレビドラマ「LOST」主演のマシュー・フォックスが演じる。ほかにも『ラストキング・オブ・スコットランド』でアカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィッテカーや『エイリアン』のシガーニー・ウィーヴァーら一流のスターが名を連ねるのでけっこう面白い。
斬新なストーリー展開と8つの視点から導き出される驚がくの結末に息をのむ。(シネマトゥデイより)
本来小説「藪の中」を映画化した「羅生門」は淡々と人間の性格やエゴイズムを証言から描き出す、文学的な人間描写が主体なのだが、「バンテージポイント」はむしろエンターテイメントに徹したサスペンスとスリルを楽しめる作品に仕上がっている。
まあ、それぞれに面白さがあり、いかに人間の認識力は頼りないものかがわかる。だから裁判でも捜査でも証言は複数のものを付き合わせるのがよくわかる。
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