21世紀における宗教の役割 前編

トラネコ

2019年05月03日 00:00

社会での宗教の役割拡大、賛成は米51% 日本は15%で最低 27か国調査
【AFP=時事】米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)は22日、宗教が社会でより大きな役割を果たすのが望ましいと考える米国人は51%に上ったとする調査結果を発表した。一方で、望ましくないと考える米国人は18%だった。

この調査は2018年に27か国で、それぞれの宗教を区別せず、各国で少なくとも1000人を対象に実施した。

米国では教会と政治が分離されているにもかかわらず、大統領は就任宣誓の際に聖書を用いるのが慣例となっており、紙幣には「われらは神を信じる」と印刷されているなど、宗教は米国人の生活で重要な部分を占めている。

米国とは対照的に、スウェーデン、フランス、オランダではそれぞれ51%、47%、45%の国民が、宗教が社会でより大きな役割を果たすのは望ましくないと考えていることが分かった。

宗教が社会でより大きな役割を果たすのが望ましいと考える人の割合が最も高かったのはインドネシア(85%)で、ケニア(74%)、ナイジェリア(74%)、チュニジア(69%)が続いた。

宗教が社会でより大きな役割を果たすのが望ましいと考える人の割合が最も低かったのは日本(15%)で、次いでスウェーデン(20%)、スペイン(23%)、フランス(24%)が低かった。

米国では年齢層によって回答の傾向に違いがあり、宗教が社会でより大きな役割を果たすのが望ましいという人は、50歳以上では61%だったのに対し、18~29歳では39%だった。【翻訳編集】 AFPBB News
AFP 時事ドットコム4/23(火)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190423-00000039-jij_afp-int

<関連エントリ>
西欧文明崩壊 キリスト教文明の終焉
https://ryotaroneko.ti-da.net/e10541782.html



         政教分離の国アメリカでも大統領就任式には
         聖書に手を置いて「神に誓う」宣誓をするのだ。

       

近年欧州では若者のキリスト教離れが加速している。
これは宗教離れと見るか、一神教との決別かと見るかである。
これを考察することで21世紀の今後の宗教の社会的役割が見えてくる。

まずは欧米の中心宗教であるキリスト教の社会的背景を見ていく。

米国とは対照的に、スウェーデン、フランス、オランダでは
 それぞれ51%、47%、45%の国民が、宗教が社会でより大きな
 役割を果たすのは望ましくないと考えていることが分かった。

アメリカと欧州のキリスト教観は異なる。

アメリカという国は、英国教会の弾圧から逃れたピューリタン(清教徒)
求めた新天地、つまり「神が約束した土地」という建国の意義が根底にあり、
移民で成り立った多民族国家ではあるが、建国の源はキリスト教なのである。

彼らの言う神の前での平等とは「キリスト教の神を信じる者の平等」
という前提でであり、さらに白人種という人種限定の宗教である。
概ねキリスト教は白人社会が基本だから有色人種は異教徒になる。

植民地での布教後に有色人種のクリスチャンが増加しても、
基本的に白人の意識の根底には白人優位の人種差別観があり、
それは現在にいたっても保守的な白人層にはかなり根強いという。

だからマニフェスト・ディスティニー(明白なる天命)をもとに、
先住民を皆殺しにして西進し、ハワイ、グゥアム、フィリピンなど、
太平洋の島嶼地域を侵略して、日本と戦争するに至ったのである。


つまり・・・

 キリスト教とは白人至上主義の、
 有色人種を殺し、奪い、征服する、
 人種差別をする宗教なのである。




       アメリカは神から与えられた清教徒の約束の地、
       という概念が建国の大前提にある宗教国家だ。




しかしキリストはアラブ系褐色人なのになぜ白人至上主義なのか?
答えは単純で、313年ローマ帝国・コンスタンティヌス帝ミラノ勅令により、
ヨーロッパという白人社会に定着した宗教だからである。

もちろんローマ帝国も厳密には白人(コーカソイド)の国ではなく、
中東系が多く混ざった有色多民族国家であったが、ゲルマン系白人の国、
神聖ローマ帝国に移行して以来、白人の宗教になったようだ。

だから異教徒である先住民や、アフリカ系奴隷、アジア系に対して、
冷酷非情な残忍な行為が平気で行ってこれたのだと私は考えている。
そして現在もなおその考えがアメリカ白人の根底にあるのだ。

実際にアメリカに暮らした知人の話では、地域にもよるだろうが、
未だに人種差別は厳然と存在する。だからしばしば報じられるように、
白人警官が容疑者だというだけでも黒人を平気で撃ち殺す事ができるのだ。



              コンスタンティヌス帝



ではヨーロッパだって同じようなものではないか、と反論が出そうだ。
もちろんヨーロッパもキリスト教文化圏であり、有色人種差別してきたが、
宗教が支配する世界における様々な弊害も経験してきた地域だ。

だから早くから政教分離もあり、カトリックとプロテスタントとの確執もあり、
異端審問、十字軍、免罪符、宗教改革、宗教戦争、植民地支配・・・など、
長きにわたってキリスト教の所為で人々が不幸になってきた歴史がある。

また19世紀には自然科学の発展とともに自由主義神学が誕生した。
聖書を絶対視するのではなく、冷静な科学的分析を試みた初めてのもので、
カトリックの絶対宗教観から宗教の相対化を図った画期的な神学である。
  ↓
<参考エントリ>
自由主義神学
https://ryotaroneko.ti-da.net/e2133389.html



          自由主義神学の祖・シュライエルマッハー


そういう歴史的背景からヨーロッパにおけるキリスト教への不信感や、
現在もイスラム過激派の移民によってテロが起こされている現実があり、
むしろ一神教全体への信頼の喪失は当然といえば当然なのである。

だから欧州の特に若年層のキリスト教離れ、忌避は著しく、
教会にも行かないし聖書も読まない若者が増加しているという。
しかし無神論というのではないから宗教離れというのではないようだ。

私の邪推だが、恐らくは「神」という概念への疑問、
厳密には新旧教会のいう「神」が存在するのかという疑問だろう。
むしろ「神」とは未知なる存在であり、聖書がいう神は嘘くさいのである。

さらにいえば・・・

キリスト教が社会の道徳の基本となってきたが、
現在ではその道徳精神の根幹は崩壊している。


数々の宗教戦争や人種差別、異民族弾圧と民族浄化、動物虐待、
宗教差別、自然破壊、女性蔑視、同性愛への偏見、小児性愛の神父・・・

もう既にキリスト教の信頼や権威そのものが消滅しようという時代なのだ。





<参考エントリ>
天皇を不敬するキリスト教こそあらゆる人種差別の根源だ!
https://ryotaroneko.ti-da.net/e10989934.html

イギリスで無宗教者が増加、いよいよ神道の時代だ!
http://ryotaroneko.ti-da.net/e10133877.html

西欧文明崩壊 キリスト教文明の終焉
https://ryotaroneko.ti-da.net/e10541782.html



        欧州の若者層におけるキリスト教離れの実態


一方・・・


アメリカでは清教徒の作ったプロテスタントの国であっても、
自由主義神学に反抗するファウンダメンタリズム(根本主義)が強く、
聖書は絶対唯一の神の言葉であり100%正しいと考えている。

現在でも福音派と呼ばれる原理主義者が国民の25%もいるのである。

かつては学校の理科の教師が進化論を教えたという「罪」で
進化論裁判なるものがいくつかの保守的な州で行われたことがあった。
現在も進化論が学校で教えられていない州(カンザス、オクラホマ)などもある

アメリカは欧州の新興プロテスタントの聖なる土地であり、
一見合理主義の塊の国であってもその根底にはキリスト教があり、
キリスト教に基づく世界を築くことが米国民の使命とかつては考えられてきた。






もっとも近年では、アメリカも多民族=多宗教の国という事実から、
12月25日に公的な場所で「Happy Christmas!」とは言えず、
「Happy holiday」と言い換える傾向があるという。

また神=Godは一神教の概念だから、この言葉を公的に使わず、
Intelligent design(知性的意匠)という表現で創造神を言い換えている。
ちなみにカトリック教会はこの概念を受け入れていない。

しかしこれらの変化も欧州ほどではなく、国民の8割がクリスチャンで、
事実上、キリスト教はアメリカの国教といっていいくらいだ。
依然としてアメリカは宗教の国だといえるだろう。

ここがカトリックに反抗したプロテスタントとの戦争や、
啓蒙思想やマルクス主義を経験した欧州との違いである。
アメリカは復古的クリスチアニズムの国といえるかも知れない。


                      ・・・数日後に次回へ続く











関連記事