再び芸術的価値と市場価値について
2008年12月27日
TVで「何でも鑑定団」という番組がある。
最近は見ないが、以前はよく見ていた。
いわゆる骨董品から玩具、趣味のコレクションなど、
ありとあらゆるモノの価値を「一流」といわれる鑑定士に鑑定させて、
登場者の品物の値打ちを鑑定する番組である。
あの番組を見ていて感じたことの一つに、
この世のものすべては「値段」がつくのだなということである。
今さらながら当たり前だが、
民事裁判などで殺人や事故死での損害賠償、人権侵害や名誉毀損の慰謝料など、
人の命も名誉も感情にも値段がつくのだ。
ま、それはともかく、あの鑑定団の番組で絵画もしばしば登場する。
それを画廊経営者の永井龍之介氏が鑑定して値段をつけるのだが、
私も一応美術が専門なので、彼の鑑定には時々「?」が付く。
実際に絵画というか、美術に関しては本当の評価って何だろうと思うことが多い。
以前エントリした「抽象画のお勉強」でも書いたが、絵画の表現も鑑賞も、
実に主観的な世界である。http://ryotaroneko.ti-da.net/e2147854.html
絵画の客観的評価というものが私にはわからない。
永井氏は本物と偽物の違いをいろいろ解説するが、
仮に偽物であったとしてもその芸術性まで否定しているものがあり、
そこに私はそこまで悪評価の作品だろうか?という疑問が起きるのだ。
これも以前書いたことだが、
「ハン・フォン・メーヘレン事件」というヨーロッパ美術界では有名な贋作事件があった。
http://ryotaroneko.ti-da.net/e2137862.html
あの事件でも美術館の学芸員や美術評論家があっさりと偽物を本物として鑑定し、
高額な値段で美術館がフェルメール作品として購入するのである。
ここで思うことは「芸術的価値」と「市場価値」である。
メーヘレン事件に限らず多くの贋作事件、また偽物事件では、
有名作家の「偽物」だから価値がないのである。
しかし一流といわれる鑑定眼をもった人が騙されるくらいだから、
その「偽物」作品の芸術性は高いのだろう。
だとしたらその作品は芸術的価値は高く評価されてもいいのだが、
作家の知名度がなければ値段はつかないのだ。
作家の知名度とは、実はこれこそが市場的価値を左右するブランドである。
市場的価値と芸術的価値とはイコールにはならないのだ。
ある美術研究家によれば巨匠ピカソの8割の作品は、
ピカソ自身も認める駄作だそうだ。
駄作ということは芸術的価値が低いかないのである。
にもかかわらず、市場ではピカソが描いたといえば、
落書きみたいなスケッチでも、びっくりする値段がつくのである。
以前ピカソの展覧会で一部がオークション出品されていたものが展示され、
それらの作品の値段が明示されていた。
鉛筆で落書きしたようなB5番くらいのスケッチが、ガラス付きの額縁に入れられていた。
その値段、ななな、なんと!800万円だった!!!!!!!!
ピカソ自身、描いた本人も駄作と認めていても、たった一つしかない「作品」に、
大金払っても欲しいという人が多くいれば、モノの値段が釣りあがるのだ。
これが需要と供給で成り立つ市場原理という奴である。
日本国内の絵画市場の特徴の一つとして、
西洋画(油彩、水彩、アクリル画)よりも日本画(膠絵)の市場価値が上である。
しかし世界市場では、江戸の浮世絵や障壁画などは別だが、
近代以降、現代作家の日本画の価値はごく一部を除いてほとんどない。
これも国や地域による市場原理が働いている。
こういってしまうとファンの方々にはお叱りを受けるだろうが、
スマップという人気アイドルグループの歌も踊りも、
1~2度しか見たことないが、はっきりいって下手だと私は思った。
エドはるみというお笑い芸人が人気らしいが、彼女の芸をyoutubeで見たが、
一体何が面白いのかまったく私には理解できなかった。
はっきり言って、くどくて、わざとらしくて、押し付けがましい不快感があった。
もちろん芸能界も美術界も一時的な人気というものもある。
しかし美術界は一度知名度を確立すれば、
制作・発表を続ける限りほぼ不動である。
しかし彼らを必要とする市場があるから人気があり、
彼らのギャラが高額になるのだろう。
市場に人気を博するというのは様々な要因があるのだろうが、
「運」も実力の内という奴だろうか・・・
<参考>
「芸術的価値と市場価値」
http://ryotaroneko.ti-da.net/e2106866.html
最近は見ないが、以前はよく見ていた。
いわゆる骨董品から玩具、趣味のコレクションなど、
ありとあらゆるモノの価値を「一流」といわれる鑑定士に鑑定させて、
登場者の品物の値打ちを鑑定する番組である。
あの番組を見ていて感じたことの一つに、
この世のものすべては「値段」がつくのだなということである。
今さらながら当たり前だが、
民事裁判などで殺人や事故死での損害賠償、人権侵害や名誉毀損の慰謝料など、
人の命も名誉も感情にも値段がつくのだ。
ま、それはともかく、あの鑑定団の番組で絵画もしばしば登場する。
それを画廊経営者の永井龍之介氏が鑑定して値段をつけるのだが、
私も一応美術が専門なので、彼の鑑定には時々「?」が付く。
実際に絵画というか、美術に関しては本当の評価って何だろうと思うことが多い。
以前エントリした「抽象画のお勉強」でも書いたが、絵画の表現も鑑賞も、
実に主観的な世界である。http://ryotaroneko.ti-da.net/e2147854.html
絵画の客観的評価というものが私にはわからない。
永井氏は本物と偽物の違いをいろいろ解説するが、
仮に偽物であったとしてもその芸術性まで否定しているものがあり、
そこに私はそこまで悪評価の作品だろうか?という疑問が起きるのだ。
これも以前書いたことだが、
「ハン・フォン・メーヘレン事件」というヨーロッパ美術界では有名な贋作事件があった。
http://ryotaroneko.ti-da.net/e2137862.html
あの事件でも美術館の学芸員や美術評論家があっさりと偽物を本物として鑑定し、
高額な値段で美術館がフェルメール作品として購入するのである。
ここで思うことは「芸術的価値」と「市場価値」である。
メーヘレン事件に限らず多くの贋作事件、また偽物事件では、
有名作家の「偽物」だから価値がないのである。
しかし一流といわれる鑑定眼をもった人が騙されるくらいだから、
その「偽物」作品の芸術性は高いのだろう。
だとしたらその作品は芸術的価値は高く評価されてもいいのだが、
作家の知名度がなければ値段はつかないのだ。
作家の知名度とは、実はこれこそが市場的価値を左右するブランドである。
市場的価値と芸術的価値とはイコールにはならないのだ。
ある美術研究家によれば巨匠ピカソの8割の作品は、
ピカソ自身も認める駄作だそうだ。
駄作ということは芸術的価値が低いかないのである。
にもかかわらず、市場ではピカソが描いたといえば、
落書きみたいなスケッチでも、びっくりする値段がつくのである。
以前ピカソの展覧会で一部がオークション出品されていたものが展示され、
それらの作品の値段が明示されていた。
鉛筆で落書きしたようなB5番くらいのスケッチが、ガラス付きの額縁に入れられていた。
その値段、ななな、なんと!800万円だった!!!!!!!!
ピカソ自身、描いた本人も駄作と認めていても、たった一つしかない「作品」に、
大金払っても欲しいという人が多くいれば、モノの値段が釣りあがるのだ。
これが需要と供給で成り立つ市場原理という奴である。
日本国内の絵画市場の特徴の一つとして、
西洋画(油彩、水彩、アクリル画)よりも日本画(膠絵)の市場価値が上である。
しかし世界市場では、江戸の浮世絵や障壁画などは別だが、
近代以降、現代作家の日本画の価値はごく一部を除いてほとんどない。
これも国や地域による市場原理が働いている。
こういってしまうとファンの方々にはお叱りを受けるだろうが、
スマップという人気アイドルグループの歌も踊りも、
1~2度しか見たことないが、はっきりいって下手だと私は思った。
エドはるみというお笑い芸人が人気らしいが、彼女の芸をyoutubeで見たが、
一体何が面白いのかまったく私には理解できなかった。
はっきり言って、くどくて、わざとらしくて、押し付けがましい不快感があった。
もちろん芸能界も美術界も一時的な人気というものもある。
しかし美術界は一度知名度を確立すれば、
制作・発表を続ける限りほぼ不動である。
しかし彼らを必要とする市場があるから人気があり、
彼らのギャラが高額になるのだろう。
市場に人気を博するというのは様々な要因があるのだろうが、
「運」も実力の内という奴だろうか・・・
<参考>
「芸術的価値と市場価値」
http://ryotaroneko.ti-da.net/e2106866.html
Posted by トラネコ at 06:00│Comments(2)
│美術
この記事へのコメント
初めまして。
あの番組は、本物かどうか鑑定して値段付けるだけみたいなもんだしなぁ。
贋作の中にも、良いのは当然あるんだけど、わざと評価低くしてるような。
悪意というか、騙そうと作られた贋作のが多くあるもんで。
芸術的かとかでなく、市場価値としてのみだから。
例え、本物よりも巧く描かれてても、贋作であれば・・・額縁代程度。
贋作描いた作者に知名度があれば、オマージュ扱いされるだろうけど。
あの番組は、本物かどうか鑑定して値段付けるだけみたいなもんだしなぁ。
贋作の中にも、良いのは当然あるんだけど、わざと評価低くしてるような。
悪意というか、騙そうと作られた贋作のが多くあるもんで。
芸術的かとかでなく、市場価値としてのみだから。
例え、本物よりも巧く描かれてても、贋作であれば・・・額縁代程度。
贋作描いた作者に知名度があれば、オマージュ扱いされるだろうけど。
Posted by 暇な仔猫。 at 2008年12月29日 17:46
暇な仔猫様
コメント有難うございます。
そうですね、市場価値というのは需要のあり無しであって、そのものの含有する価値(芸術的価値)とは別次元のものですものね。
まあ「鑑定団」はバラエティ番組ですから、「損した、得した」みたいなノリも入れながら楽しく観れることが、制作側としては視聴率の上では、重要なんでしょうね。
コメント有難うございます。
そうですね、市場価値というのは需要のあり無しであって、そのものの含有する価値(芸術的価値)とは別次元のものですものね。
まあ「鑑定団」はバラエティ番組ですから、「損した、得した」みたいなノリも入れながら楽しく観れることが、制作側としては視聴率の上では、重要なんでしょうね。
Posted by トラネコ at 2009年01月01日 15:17