太陽は神様、それとも・・・
2008年09月17日
洋の東西を問わず太陽信仰はむかしから世界中にあった。
北欧神話のソール神、エジプトのアメン神、インカ帝国のインティ(ビラコチャ)・・・
など世界中に太陽神の信仰がある。
ただし一神教であるキリスト、ユダヤ、イスラム教が布教された地域では、
太陽信仰も邪教として排斥、撲滅されいまは歴史の1ページに過ぎない。
太陽の光(明かり)と熱(暖かさ)は地上の生きとし生けるものすべてに、
命のエネルギーを与えてくれるので、古代人は太陽が消滅することが恐ろしかったらしい。
マヤ文明では太陽に毎日生け贄を捧げないと、明日は昇ってくれないと考えた。
しかし同じ太陽でも東アジア、東南アジアの農耕地域や北欧の光の乏しい地域と、
エジプトやメソポタミアなどの乾燥地域とではとらえ方が違う。
それは太陽神を男性と見るか、女性と見るかの位置付けでわかる。
例えばエジプト神話のアメン神やギリシャ神話のアポロンは男性神で、
日本の天照大神は女性神である。
たしかゲルマンの太陽神も女性神である。
おそらくこれは太陽を母性原理と父性原理でとらえた結果だと思う。
太陽神を女性神にしている神話のほうが圧倒的に多いらしい。
母性原理の太陽神は恵みの象徴である。東南アジアの農耕民族は太陽の運行にしたがって種まきや収穫を行う。いわゆる「お天道様と相談」しながら農耕に従事するのだ。
また北欧のゲルマン民族は逆に太陽光線が乏しいゆえに、より一層太陽の光と熱を強く求め、その恩恵に浴したいと願う。現在でもヨーロッパ中西部の人々は夏のヴァカンスには南欧の太陽を求めて大移動するという。やはり太陽がありがたいのだ。
ところが、所変われば品変わるではないが、
乾燥地域では太陽は与えてくれるより、奪う、或いは制限する厳しい存在になる。
いわゆる父性原理である。
乾燥地帯ではまず水が乏しく貴重品である。
メソポタミア、エジプトでは大河の傍でないと農耕できないのだ。「エジプトはナイルの賜物」といわれ、ナイル河の氾濫が肥沃な土地を支えた。決して太陽の賜物とは言わないのだ。
おそらく乾季にはいると水の確保は大変だったのではないかと思う。砂漠の地域ではむかしからオアシスの占有権をめぐる争いが絶えなかったという。乾燥・砂漠地帯では太陽は水を奪う存在なのだ。その風土ゆえ、砂漠や乾燥地帯の遊牧民は戦闘的で気性が荒い。
キリスト教やイスラム教は気の荒い戦闘的部族を纏め上げるイデオロギーとして生まれた宗教なのだ。
十代の終わりに読んだアルベール・カミュの「異邦人」には、
主人公のムルソーは殺人動機を太陽にせいにする場面がある。
この意味を初めはよくわからず、ただの言い逃れの屁理屈だと思っていた。
しかし舞台はアルジェリアの乾燥・砂漠地帯である。それを頭にいれて異邦人を読むと、太陽の悪魔的存在感が理解できるのだ。
この小説を3度読んだが、乾燥地帯にギラギラと照る太陽は、あたかもすべての生命を焼き尽くすような攻撃性を感じるのだ。まるで悪魔的な太陽を連想させられ、読んでいて喉が渇いてくるような錯覚にとらわれる。
題名は忘れたが、森本哲郎のエッセーで面白い話があった。
エジプトのツアーに参加して、ギザのピラミッドを見学した帰りに、
太陽が沈む光景に日本人観光客は感動し、
バスを止めさせて夕陽を見入っていた。
それをエジプト人のバス運転手は不思議そうにこう言った。
「あんた方の国・日本には太陽がないのかね?」
新年にご来迎を見るためにわざわざ富士山や各地の山に登り、
あるいは飛行機をチャーターしてまで太陽に合掌する。
これは日本人にはごく当たり前のことなのだ。
日本人にとって太陽は恵みのありがたい神さまなのだ。
やはり日の丸の国の国民だ。
ここ沖縄でも太陽は「てぃだ」、「てぃーだ」、「てだこ」とよばれ、
太陽を意味するのだ。このてぃーだ・ブログもこの意味である。
特に琉球王権は太陽信仰とニライカナイの海洋信仰で成り立っているという。
歴史学者の外間守善氏の言葉を借りると「てだこ思想」という。
「玉城城跡の太陽の門」
おなじ太陽を信仰するにしても風土がかわればこれだけとらえ方も変わるのだ。
歴史でも文化でも宗教でも、それらを考えるときには、
必ず風土と時代背景をあわせて考えなければならない。
この当たり前のことを意外に普通に忘れているのではないか・・・
北欧神話のソール神、エジプトのアメン神、インカ帝国のインティ(ビラコチャ)・・・
など世界中に太陽神の信仰がある。
ただし一神教であるキリスト、ユダヤ、イスラム教が布教された地域では、
太陽信仰も邪教として排斥、撲滅されいまは歴史の1ページに過ぎない。
太陽の光(明かり)と熱(暖かさ)は地上の生きとし生けるものすべてに、
命のエネルギーを与えてくれるので、古代人は太陽が消滅することが恐ろしかったらしい。
マヤ文明では太陽に毎日生け贄を捧げないと、明日は昇ってくれないと考えた。
しかし同じ太陽でも東アジア、東南アジアの農耕地域や北欧の光の乏しい地域と、
エジプトやメソポタミアなどの乾燥地域とではとらえ方が違う。
それは太陽神を男性と見るか、女性と見るかの位置付けでわかる。
例えばエジプト神話のアメン神やギリシャ神話のアポロンは男性神で、
日本の天照大神は女性神である。
たしかゲルマンの太陽神も女性神である。
おそらくこれは太陽を母性原理と父性原理でとらえた結果だと思う。
太陽神を女性神にしている神話のほうが圧倒的に多いらしい。
母性原理の太陽神は恵みの象徴である。東南アジアの農耕民族は太陽の運行にしたがって種まきや収穫を行う。いわゆる「お天道様と相談」しながら農耕に従事するのだ。
また北欧のゲルマン民族は逆に太陽光線が乏しいゆえに、より一層太陽の光と熱を強く求め、その恩恵に浴したいと願う。現在でもヨーロッパ中西部の人々は夏のヴァカンスには南欧の太陽を求めて大移動するという。やはり太陽がありがたいのだ。
ところが、所変われば品変わるではないが、
乾燥地域では太陽は与えてくれるより、奪う、或いは制限する厳しい存在になる。
いわゆる父性原理である。
乾燥地帯ではまず水が乏しく貴重品である。
メソポタミア、エジプトでは大河の傍でないと農耕できないのだ。「エジプトはナイルの賜物」といわれ、ナイル河の氾濫が肥沃な土地を支えた。決して太陽の賜物とは言わないのだ。
おそらく乾季にはいると水の確保は大変だったのではないかと思う。砂漠の地域ではむかしからオアシスの占有権をめぐる争いが絶えなかったという。乾燥・砂漠地帯では太陽は水を奪う存在なのだ。その風土ゆえ、砂漠や乾燥地帯の遊牧民は戦闘的で気性が荒い。
キリスト教やイスラム教は気の荒い戦闘的部族を纏め上げるイデオロギーとして生まれた宗教なのだ。
十代の終わりに読んだアルベール・カミュの「異邦人」には、
主人公のムルソーは殺人動機を太陽にせいにする場面がある。
この意味を初めはよくわからず、ただの言い逃れの屁理屈だと思っていた。
しかし舞台はアルジェリアの乾燥・砂漠地帯である。それを頭にいれて異邦人を読むと、太陽の悪魔的存在感が理解できるのだ。
この小説を3度読んだが、乾燥地帯にギラギラと照る太陽は、あたかもすべての生命を焼き尽くすような攻撃性を感じるのだ。まるで悪魔的な太陽を連想させられ、読んでいて喉が渇いてくるような錯覚にとらわれる。
題名は忘れたが、森本哲郎のエッセーで面白い話があった。
エジプトのツアーに参加して、ギザのピラミッドを見学した帰りに、
太陽が沈む光景に日本人観光客は感動し、
バスを止めさせて夕陽を見入っていた。
それをエジプト人のバス運転手は不思議そうにこう言った。
「あんた方の国・日本には太陽がないのかね?」
新年にご来迎を見るためにわざわざ富士山や各地の山に登り、
あるいは飛行機をチャーターしてまで太陽に合掌する。
これは日本人にはごく当たり前のことなのだ。
日本人にとって太陽は恵みのありがたい神さまなのだ。
やはり日の丸の国の国民だ。
ここ沖縄でも太陽は「てぃだ」、「てぃーだ」、「てだこ」とよばれ、
太陽を意味するのだ。このてぃーだ・ブログもこの意味である。
特に琉球王権は太陽信仰とニライカナイの海洋信仰で成り立っているという。
歴史学者の外間守善氏の言葉を借りると「てだこ思想」という。
「玉城城跡の太陽の門」
おなじ太陽を信仰するにしても風土がかわればこれだけとらえ方も変わるのだ。
歴史でも文化でも宗教でも、それらを考えるときには、
必ず風土と時代背景をあわせて考えなければならない。
この当たり前のことを意外に普通に忘れているのではないか・・・
Posted by トラネコ at 07:00│Comments(5)
│文化
この記事へのコメント
トラネコ様
太陽神を女性と見るか男性と見るか。。
日本には緑豊かな山々、川、海に囲まれた農耕民族と、かの乾燥地帯の厳しい地帯で生きる民族とは同じ人間でも凄い感性の開きがありますね。
気性の荒さは、やはり怖い怖い絶対神である神がいつも見てるのじゃw
でなくては抑え効かないんですかね。
私も昔、10代の頃カミュの「異邦人」読みましたが、よく分かりませんでしたね。
トラネコさんの何、太陽のせいにしてるんやって笑いました。
日本人には太陽が人の心を狂わすなんて感性ないですもんね。
最近、早起きなんで東の窓からご来光が拝めますが、毎日の暑さで
「おぉ、又今日も暑いなぁ~」って思いますが。
太陽は有り難いものです。
太陽神を女性と見るか男性と見るか。。
日本には緑豊かな山々、川、海に囲まれた農耕民族と、かの乾燥地帯の厳しい地帯で生きる民族とは同じ人間でも凄い感性の開きがありますね。
気性の荒さは、やはり怖い怖い絶対神である神がいつも見てるのじゃw
でなくては抑え効かないんですかね。
私も昔、10代の頃カミュの「異邦人」読みましたが、よく分かりませんでしたね。
トラネコさんの何、太陽のせいにしてるんやって笑いました。
日本人には太陽が人の心を狂わすなんて感性ないですもんね。
最近、早起きなんで東の窓からご来光が拝めますが、毎日の暑さで
「おぉ、又今日も暑いなぁ~」って思いますが。
太陽は有り難いものです。
Posted by うさこ at 2015年08月30日 05:09
うさこ様
私はメキシコの高原地帯に住んでいるのですが、ここは1年を通じて四季の変化をさほど感じないのです。高山気候のため空気は常に乾燥して雨季でも蒸し暑くなくとても涼しいです。7月、8月といえば日本は蒸し暑くてたまりませんが、ここは朝夕は寒いくらいです。
こういう地域にいると日本は四季の変化が、非常にはっきりしていることがわかります。それはすべて太陽の運行と強弱から影響されて、まさにお天道様です。だから四季折々の暮らしや行事があるのだろうと思いますね。お天道様が見ているというのは、神様が見ているというのと同じですね。
私はメキシコの高原地帯に住んでいるのですが、ここは1年を通じて四季の変化をさほど感じないのです。高山気候のため空気は常に乾燥して雨季でも蒸し暑くなくとても涼しいです。7月、8月といえば日本は蒸し暑くてたまりませんが、ここは朝夕は寒いくらいです。
こういう地域にいると日本は四季の変化が、非常にはっきりしていることがわかります。それはすべて太陽の運行と強弱から影響されて、まさにお天道様です。だから四季折々の暮らしや行事があるのだろうと思いますね。お天道様が見ているというのは、神様が見ているというのと同じですね。
Posted by トラネコ at 2015年08月30日 10:52
こんばんは。
突然のコメントすみません。
私は大学4年生で、今、天照大神について卒業論文を書いています。
さまざまな話をネットで調べているうちに、トラネコ様の日記のこの記事に出会いました。
大変興味深い内容で、特に男性の太陽神と女性の太陽神は地域によって、また太陽に対して持つイメージによって変わる、という説を、卒論を書くうえでぜひ参考にしていただければと思っております。
失礼ですが、こちらのブログの内容は、何かしら本などで集めた情報であったりしますでしょうか?もし少しでも、太陽神の性別に関する情報が載っている書籍をご存知であれば、教えていただけないでしょうか??
卒論の参考文献が、個人のブログからの引用は不可といわれておりまして、もし何か参考にしていただける情報をお持ちであればと思い、コメントさせていただきました。
長文失礼いたしました。お返事お待ちしております。
突然のコメントすみません。
私は大学4年生で、今、天照大神について卒業論文を書いています。
さまざまな話をネットで調べているうちに、トラネコ様の日記のこの記事に出会いました。
大変興味深い内容で、特に男性の太陽神と女性の太陽神は地域によって、また太陽に対して持つイメージによって変わる、という説を、卒論を書くうえでぜひ参考にしていただければと思っております。
失礼ですが、こちらのブログの内容は、何かしら本などで集めた情報であったりしますでしょうか?もし少しでも、太陽神の性別に関する情報が載っている書籍をご存知であれば、教えていただけないでしょうか??
卒論の参考文献が、個人のブログからの引用は不可といわれておりまして、もし何か参考にしていただける情報をお持ちであればと思い、コメントさせていただきました。
長文失礼いたしました。お返事お待ちしております。
Posted by ちろ at 2016年12月22日 18:11
ちろ様
コメントありがとうございます。
このエントリ内容ですが、恐らくこの手の随筆風の文章は、お読みいただいてわかる通り、様々な文献や報道記事や映画や小説などを引用しつつ、自分の意見を加えた内容になるものだと思います。
あえて参考文献をあげますと、環境考古学者の安田喜憲氏の著作(どれだったか忘れましたが)が私に影響を与えていると思いますので、是非そちらの文献を当たってみてはいかがでしょうか? こちらに太陽神についての考察があったと思います。
コメントありがとうございます。
このエントリ内容ですが、恐らくこの手の随筆風の文章は、お読みいただいてわかる通り、様々な文献や報道記事や映画や小説などを引用しつつ、自分の意見を加えた内容になるものだと思います。
あえて参考文献をあげますと、環境考古学者の安田喜憲氏の著作(どれだったか忘れましたが)が私に影響を与えていると思いますので、是非そちらの文献を当たってみてはいかがでしょうか? こちらに太陽神についての考察があったと思います。
Posted by トラネコ at 2016年12月22日 18:32
トラネコ様
お返事ありがとうございます。
さっそく安田氏の文献を探してみようと思います。
ご丁寧に、ありがとうございました。
お返事ありがとうございます。
さっそく安田氏の文献を探してみようと思います。
ご丁寧に、ありがとうございました。
Posted by ちろ at 2016年12月26日 15:44