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トラネコの仕事 in Mexico その2

2014年06月19日

トラネコの仕事 in Mexico その2

                 メテペック市の特産品『生命の木』


さて、思い出せば、もう一年半くらい前になるでしょうか、
私トラネコが当時の仕事を紹介したエントリを上げて以来、
某州政府のグータラぶりで、まったく仕事が進みませんでした。

そこで現在はメキシコ中部の某州政府に移転しました。
ここは以前と180度真逆の職場、同じメキシコの公務員で、
こうも違うものかと、逆カルチュアショックを受けてしまいました。

計画性はあるは、時間はほぼ正確だわ、有言実行だわ・・・
残業代も出ないのに夜8~9時まで働いているは、
人によっては土日出勤もしているわ、何か日本みたいです(汗)

ここは本当にメキシコか???

ま、とにかくこちらに来てよかったです♪
仕事は前とほぼ似たようなもので、地域の経済開発に関わって、
民芸品職人の収入向上と地場産業の育成のお手伝いです。


トラネコの仕事 in Mexico その2

               マサウア族の伝統紋様をあしらったベスト


特に私の場合は、先住民文化や歴史に関心があって、
メキシコに何度も足を運んだ経験から、先住民文化への憧憬が強く、
自分もかつて職人だったこともあり、先住民の民芸品をできれば、
地場産業として発展させたいという願いがあります。

ただ今回の地域はユカタン半島のマヤ族とは異なり、
ナワトル・オトミ・マサウアなどの先住民文化がいまも健在に生きており、
言葉や生活にもその文化を反映し、伝統的民芸品も多数あります。

ユカタン半島のマヤ族は、その文化を反映した民芸品は殆どなく、
先住民としてのアイデンティティも薄れつつありましたから、
こちらに来てから改めて先住民文化の重厚さを感じました。

ウイピルという貫頭衣から発達した女性のワンピースの花柄が、
一応ユカタンマヤの伝統文様といわれますが、
これはスペイン人の持ち込んだ柄でマヤ文化とは別です。


トラネコの仕事 in Mexico その2

             美しい花柄の刺繍だがマヤ文明のものではない。


ユカタン・マヤの為に、刺繍や新商品のデザインを200枚ほど考案しましたが、
それはマヤ文化の特徴のあるデザインが殆どないから、いくらでも作れました。
州政府がこれを製品化する気があれば、面白かったんですが・・・

ところがこちらでは・・

ナワトル族の刺繍だけのデザインが100種類以上あり、一つ一つに名前もついています。
その名前がロマンチックな詩の題名みたいな名前で、実に民族文化を感じさせます。
私がデザイン指導したり創作する余地は、ここではありません(涙)

そんな状況で、私がでしゃばりだしたのが・・・

各市町村ごとに民芸品のブランド・マークを作ろうという提案でした。
これは日本でいう『県産品』として地場産業のブランド化を目指し、
他の地域との差別化をはかることを意図しています。

と言いますのは、同一部族の市町村がいくつもあり、同じ民芸品を生産しています。
しかしよく見ると隣の市町村の製品でも、微妙に色合いや形に差異が見られるのです。
そこで"Made in OKINAWA"みたいな感覚で『県産品』マークを付けようということです。

実際に、商標タグがついているか、いないかでかなり消費者受けが変わります。
またブランド・マークがあるだけで、パンフレットや看板や情宣にも利用できます。
こういうのがあるとないとでは、商品戦略にも大きな差が出てきますしね。


トラネコの仕事 in Mexico その2

      要望のある市町村の地域的特徴を取り入れたデザインを考案しました。
      上はモナルカ蝶・蘭・テマスカル(先住民のサウナ)を組み合わせた、
      某村のマークで、これらがここの地域的特長であり、名物だそうです。


トラネコの仕事 in Mexico その2

        上はマサウア族地域の某市のもので、マサウアとは鹿のいる場所
        という意味で、先住民は鹿が先祖だという事だそうです。
        

トラネコの仕事 in Mexico その2

       マークのフォルムが決まり、今度は彩色を施したものです。
       これはシナカンテペック(コウモリの丘)市のためのマークです。
       全部で15種類くらいの組み合わせですが、色の指定があります。


トラネコの仕事 in Mexico その2

           はい、トラネコの醜態を晒します(笑)
        三方の壁にはデザインのアイデアスケッチなどが貼られています。
        私のオフィスですが、机上は道具その他でごちゃごちゃです(恥)


トラネコの仕事 in Mexico その2



トラネコの仕事 in Mexico その2



トラネコの仕事 in Mexico その2

         出来上がったアイデアスケッチを再度、各市町村に持参し、
         役所の関係者や職人さんに集まってもらい検討会を行ないます。


・・・とまあ、こんなことに日々携わっているトラネコです。
たまにこういうエントリしとかないとね、美術屋であることを疑われ、
政冶ブログばかり書いているボヤキ親父とは、思われたくないんです(笑)


      
トラネコの仕事 in Mexico その2

                へえ~トラネコって美術もやるんだ・・・
                「いや、美術が本業なんだよっ(怒)」


              では今日はこの辺で~!



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Posted by トラネコ at 00:00│Comments(10)メキシコ
この記事へのコメント
先住民の色や柄は本当に美しいですね。 たまに日本の店のチチカカに行くのですがその国の事を何も知らずに買っていたんだなと感じました。 私はどんなにカッコイイTシャツでも聴かないバンドのTシャツは着ない主義なので民芸品ももっと愛着が湧くようにこれからは歴史などを調べようと思います。 今日は新鮮な気持ちになりました。 ありがとうございます。 仕事、頑張ってください。 応援しています。    p.s.アメリカのワークシャツが好きな私はトラネコさんがオフィスで着ているチャコールグレー?のシャツも気になりました。^^)
Posted by キース・ジャガー at 2014年06月19日 09:54
その国の古くからある文化を守り育てていく、という素晴らしいお仕事を外国人であるトラネコ様がなさっているのですね。メキシコの刺繍というとあまり日本に馴染みがないのでぜひ日本で展覧会の様なものを開いてほしいです。(トラネコ様の個展も兼ねて)
それにしても今回一番驚いたのはトラネコ様が若いことです。ブログ記事からお歳は大体想像できていて勝手に白髪でお髭の風貌を思い浮かべていましたので(^_^;)ギャップに驚いています。
Posted by kabu at 2014年06月19日 10:02
キース・ジャガー様
どうもありがとうございます。
本当にアメリカ先住民の民芸デザインは素晴らしいです。
仕事柄いろんな国の服飾デザインを見ますが、メキシコ先住民のものは現代の感性で見ても、十分世界に通用するくらい洗練されています。ユカタン・マヤの人たちは本当に、根こそぎスペインに滅ぼされたみたいなんです。だから何も残っていないんですね。同じマヤでもチアパス州やお隣のグゥアテマラに行けば、素敵な刺繍や織物が一杯あるんですよ♪

ところで私もワークシャツは好きですね。ファッションだけでいえばアメリカン・カジュアルは結構好きなんです。フォーマルは十代の頃からアイビー一筋です。それと写真のものはオリーブグリーンです。写り方が暗かったようですね。


kabu様
私はここの州政府や市町村役場で、必ず強調することがあります。
それは伝統工芸・民芸は、あなた方の先祖が残してくれた文化遺産であり、宝である。さらにそれはメキシコだけではなく世界の宝です、といつも強調するのです。そしてそのデザインは欧米や日本人も十分評価できる素晴らしいものであることも付け加えます。

伝統紋様のよさは意外にも、地元民は当たり前過ぎてわからないんですよね。これは明治時代以降、日本美術が西欧に評価されるまで、日本人はその価値を知らなかったのと同じです。それと、どーでもいいことですが、私は今年還暦です(笑)
Posted by トラネコトラネコ at 2014年06月19日 10:32
確かに、伝統や文化的なブランドマークが付いていると宣伝もしやすいですしインパクトがあっていいですね~。

自分、小学生の時に、インカ帝国やナスカ地上の絵などが特集された月刊誌を食い入るように見ながら、神秘的な写真にいろいろなイメージや想像を膨らせた事もありましたが、トラネコさんが考案された地域的特徴を取り入れたデザインも一つ一つの特徴があって、どこか神秘的で素敵です。

トラネコさんのオフィスの壁は白一色で、私の場合白だけだと落ち着かないので、連なる山々か、海岸線の大自然風景画とかを、息抜き時のチラミ用で飾っちゃいそうですw

還暦・・・えっ!信じられない、とっても若々しいです。三十中盤の私の方は最近急に白髪が増えてきて悩ましいですw
Posted by 猫ザト at 2014年06月19日 13:44
猫ザト様
恐らく世界中で、何百年以上も前から伝わっている伝統紋様は、どこか共通点もあったりして、その昔人類が世界帝国なんか作ってた・・・な~んてね、ムー大陸みたいな話しにワープしちゃいます(笑)私も超古代文明とかの話し結構すきですよ。与那国島の海底遺跡見るために行きましたからね。インカ文明ではマチュピチュには行きましたが、凄かったですよ。山の上によくもあんな石組みや段々畑に感慨用水路作ったもんだってねw古代人の知恵に敬服しますわ。
Posted by トラネコトラネコ at 2014年06月19日 14:13
メキシコ刺繍 色鮮やかでですね。是非 兵庫県でも 「展示会」をして下さい。大阪でも行きます。

メキシコ刺繍を日本人が着れそうに 少しアレンジをし ブラウス スカート パンツ Tシャツ 鞄 靴 アクセサリー と プチプラ価格で販売されたら嬉しいです。(色鮮やか過ぎると恥ずかしく年齢なので)

インカ帝国 ナスカの地上絵の Tシャツがあれば 息子に即買いしま
す。メキシコの歴史も 私も勉強して見ますねー!未知なる不思議なメキシコ!メキシコオリジナル商品も トラネコ先生 お勧めで どんどん紹介して下さい。

私も画像を見て トラネコ先生 三十代?私よりも年下なんだー!と思いました。
会議での お姿 凄く素敵ですね。
ポロシャツの着こなしも似合っていて カッコいいです。

兵庫県 大阪 で 「展示会」がなされたら 是非 駆け付け サインを貰いまーす(^-^)。絶対 還暦に見えないです。知識人で頭も良いので きっと モテモテでしょうネッ!(頭の良い男性が好きな女性って多いです。ルックスもバッチグー(古ッ)
くれぐれも 安全と健康に 気を付けて 頑張って下さい!
Posted by 兵庫県民 at 2014年06月19日 17:40
世界的に見れば、メキシコの伝統工芸・民芸は日本の伝統工芸・民芸よりも有名なのではないでしょうか。 メキシコ刺繍・雑貨は日本でも人気があるようですし…。

それに、日本の伝統工芸・民芸は後継者問題や売り上げ低下に苦しんでいます。 西陣織などは、手織りを減らして自働織りに移行して乗り切ろうとしていますし、漆塗りや陶器磁器なども様式の現代化をはかって市場の開拓を目指しています。 今や、日本の伝統工芸が生き残るためには、海外市場の開拓も必要とされています。
Posted by 伯爵 at 2014年06月19日 20:07
兵庫県民様
自分もこの仕事をするまで知らなかったのですが、メキシコ先住民のデザインは既に世界の有名ブランドやアパレル系企業で採用され、商品化されているんです。日本でもマヤ、アステカデザインの衣類は多いですよ。驚いたのはフランク・ロイド・ライトが東京帝国ホテルの設計をやったとき、既にマヤのピラミッドのレリーフを随所に装飾的に取り入れていたことです。メキシコ先住民のデザインセンスの抜群さに驚きます。・・・それと・・・褒め過ぎですwwwこんな小さな写真で、そこまでディティールがわかるんですか?


伯爵様
同じ問題はメキシコにもあります。
今は政府が先住民支援に乗り出し、就学率も地域によってことなりますが、大体100%近いですから、彼らの子女は伝統工芸の後継者にはなりたがらないのです。私は京都で40年近く前に、着物の染色職人をしていましたが、現在京都の着物産業関係は8割も倒産、閉店しています。知人の西陣織三代目も工房をたたみ、新聞配達、嫁さんはホカ弁でバイトです。これが世界的に共通する現象です。だから政治が伝統工芸=文化を保存維持する義務を負うと私は思っています。
Posted by トラネコトラネコ at 2014年06月20日 00:14
メキシコファッション 日本の何処で販売されてますかー?
私・・疎くて知らなかったです。
店舗名が わかったら 調べて買いに行きたいです。

トラネコ先生!褒めすぎじゃ無く マジに若いです。私の実母 62歳 が身近にいますので・・現役で しかも 海外で活躍されてる方は違いますねー!
実母も経理やスイミング等 父母親で ドライブへ行ったり お友達と旅行したり 山登りしたり 楽しんでいます。山登り 靴からファッション迄 専門ブランドでキメキメで 危なく無い 山をお友達と登り 温泉に入り帰宅〜と元気に両親仲良く 楽しんでいます。

トラネコ先生も 私には実現出来無い メキシコや海外で活躍されて 凄いなぁーと思います。

※ 西陣織三代目が店を畳み 新聞配達やほか弁で パート何て 畑違い過ぎて しかも 由緒ある西陣織三代目や文化財の分野の跡取り一族が文化伝統を後世に残せないのは絶対に間違っています。気付いた時に手遅れです。政府で予算を組み日本の伝統を守って欲しいです。在日ナマポ 朝鮮学校に流す資金を充てたら 色々な面で日本国民に有益になるのでは無いでしょうか?
移民政策も 大阪 京都 兵庫県〜スタートされそうです。
私の地元に変化が起きたら 報告しますねー!実験にされてる感じです。
Posted by 兵庫県民 at 2014年06月20日 09:44
兵庫県民様
過分なお言葉恐縮であります。
しかし私に言わせれば、あなたも素敵なご家庭を築かれて、私には出来ないことを実現なさっています。私は一度家庭を持ちましたが見事に失敗しましたから、立派だと思います。

伝統文化継承ですが、日本の政治家と役人にないもの、それが文化なんです。
彼らには実利と保身しかありません。ま、その点はメキシコも同じですけどね。仰るように在日半島人に生保やる無駄金があるなら、もっと伝統工芸維持のために使って欲しいですね・・・。
Posted by トラネコトラネコ at 2014年06月20日 10:32
 
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